PCA|エビデンスにもとづいてピラティスを進化させ、日本の健康産業の信頼に貢献します。

識者に訊く超高齢社会の解決

ダンサー、スポーツ医学、整形外科、それぞれのお立場から

具合が悪くなってから治す“対処療法”から“予防医学”を中心に据えていくことが求められている日本。
ダンサー、スポーツ医学、整形外科、それぞれのお立場から3人の先生方が、今、大切に感じておられることをお聞きました。

ダンサーは日々変化する身体を冷静に見つめ

ダンサーは日々変化する身体を冷静に見つめ、 最高のパフォーマンスを淋き出すために調整を繰り返さなければなりません。これは、想像以上に繊細な作業でちょっとしたバランスの違いで結果が大きく異なります。私が専門とするコンテンポラリーダンスは、様々なアイデアやイメージを基に多様な形態の動きを創造していくジャンルであるため、 これ!というスタンダードな身体調整法がありません。
これまで私はダンサーとしての長いキャリアの中で、気が付かないうちに自分では解決の糸口を見いだせないような身体の状況に陥り、不安な気持ちを抱えながら過ごしていた時間が多かったように思います。
そのような中で、オーストラリア政府認定のカリキュラムに沿ったピラティスは、解剖学に基づき長年の研究成果に裏打ちされ、大変シンプルでありながらも多様なバリエーションを持ちあわせたダンサーにとって頼れるコンディショニング法の一つであるといえます。とりわけ、PCAの主宰である更科枝里さんとの巡り合えたことは私にとって代え難いもので、彼女の専門性、 そしてピラティスヘの情熱に感動し、 今は大きな信頼を寄せています。彼女とのセッションは毎回真剣勝負で、 身体がゆっくりと目覚め、 統合され、 そして活気を取り戻し解放されていくプロセスを体感しています。
自分の身体を誰に、どのように、預け、管理するかを見極めることはダンサーにとって大きな生命線なのです。

  • km コンテンポラリーダンサー、 振付家筑波大学体育系准教授
    平山素子先生
    Profile

    コンテンポラリーダンサー/振付家/筑波大学体育系准教授。 幼少よりパレエを習い、筑波大学・大学院にて舞踊を専攻。世界バレエ&モダンダンスコンクールにて全賞とニジンスキー賞をダプル受賞。振付家としてこれまで多くの作品を送り出し、新国立劇場委託作品「Butterfly」、「春の祭典」(中川鋭之助賞、 江口隆哉賞、 芸術遺奨文部科学大臣新人賞)などがある。さらにシンクロナイズドスイミングやフィギュアスケートの日本代表選手への指導も手掛けている。日本のダンスシーンをリードする存在。

その人にあった負荷で楽しくできるピラティスのような運動が、高齢者の健康維持、向上の一助となっていくことを願っています。

超高齢化は、日本の社会が抱えているいちばん大きな問題です。認知症の発症リスクの最たるものは年齢ですので、高齢化が進めば認知症を発症する人の数は当然のことながら増えていきます。物忘れや認知症の問題を解決するための正確なメカニズムの解明は急務なのですが、研究報告がいくつもあるなかでエビデンスが最もあるのが、運動との関係です。運動は認知症において抑制効果があると言われています。
運動がもたらす効果の機序として、運動によってBDNF (brainderived neurotrophic factor)の産生量が増えることが報告されています。BDNFは脳由来神経栄養因子と呼ばれるタンパク質の一種で、平たくいうと神経細胞を元気にさせる物質のこと。脳内で記憶を司る「海馬」に多く含まれ、動物実験では老齢化によってBDNFが少なくなることがわかってきました。このBDNFが運動によって増加します。
また、定期的に運動をしている人は、海馬や前頭葉の血流が良くなり、このことが記憶や注意などの認知機能にプラスになると考えられています。一方、過度なストレスは海馬の神経細胞の働きを弱めてしまうため、逆に物忘れが目立つことがあります。とはいっても運動が苦手だったり嫌いだったり、運動自体がストレスになってしまう場合もありますし、身体的な状況で運動を医者に止められている人もいます。このようなことから老若男女はもちろん体力も問わず、その人にあった負荷で楽しくできるピラティスのような運動が、高齢者の健康維持、向上の一助となっていくことを願っています。人に優しく一人ひとりが適材適所で貢献できるあたたかい社会が作られていくことに、私自身、今後も力を尽くしていきたいと思っています。

  • km 筑波大学大学院 人間総合科学研究科教授
    スポーツ健康システム・マネジメント専攻長
    水上 勝義 先生(Dr.Katsuyoshi Mizukami)プロフィール

    筑波大学医学専門学群卒業。筑波大学精神科研修医、 都立松沢病院精神科医師、 筑波大学臨床医学系精神医学准教授などを経て現職。アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症の臨床および基礎研究を通して、新たな診断法の開発や認知症治療における東洋医学と西洋医学の統合医療に尽力。スポーツ団体などで働いている人を対象に、日本の未来を担う博士レベルの知識を備えた高度な専門職業人の養成にも力を注いでいる。

運動療法が社会にもたらす効果は、これからどんどん大きくなると信じています。

 整形外科医は「軟骨がすり減って、関節に痛みがあったら手術をする」という教育を受けています。もちろん私もその一人です。しかしいざ現場に立つと、軟骨が残っていても痛いという方がいる一方で、軟骨がなくても全然痛くない方もいらっしゃる。その違いを解明すべく、私は保存療法に目を向けるようになりました。当院の患者さんには最低3ヶ月、3つのことをお願いしていまます。体重を落として、筋力をつけ、正しい歩き方を覚えてもらうという療法です。
指導は生活習慣の改善もしかりですが、簡単なピラティスを入れることもあります。それで3ヶ月後、だいぶ良くなる人が実はたくさんいるのです。にもかかわらず手術が優先されるのは、手術には報酬があり、残念ながら指導には何の評価もいただけないのが日本の医療制度だからです。私は人工関節の専門家ではありますが、手術をせずに痛みが取れる方法がベスト療法だと思っています。日本もオーストラリアやイギリス同様に、保存療法に効果的なピラティスが保険で受けられるようになる日を待ちわびています。受けられないほうがおかしいのです、もともとリハビリのために生まれたものなのですから。
身体の痛みとは、「身体の部品が壊れてますよ」と脳に伝える大事なサイン。部品が壊れている原因を治すのが本当の治療です。痛み止めという薬は、症状(痛み)だけを止め、原因は元のまま。運動療法(リハビリ)は原因を治療する大切なプロセスですが、日本の医療界では脇に追いやられています。その代わりに、痛みをブロックするだけの薬や、最終療法の手術ばかりが前面に押し出されています。
少し減量して身体を動かし、その結果、筋肉のバランスが戻るだけで、驚くような効果が出ます。今まで軟骨がなくなって「手術しかない」と言われてきた患者さんの多くが、痛みから解放されています。運動療法が社会にもたらす効果は、これからどんどん大きくなると信じています。

  • it 湘南鎌倉総合病院 人口膝関節センター長
    巽 一郎 先生(Dr.Ichiro Tatsumi)プロフィール

    静岡県立薬科大学薬学部卒業。薬剤師になる予定だったが、「自分が本当になりたいのは医者」ということに気づき、大阪市立大学医学部に入学。卒業後同附属病院整形外科に入局。アメリカ・メイヨー・クリニック、イギリス・オックスフォード大学整形外科留学を経て、2006年湘南鎌倉人工関節センター副院長に、2010年より現職。 筋肉を切らずに痛んでいる内側だけを人工関節にするMIS人工関節置換術の世界的権威として知られている。
    著書『膝、復活』(小学館)

予防医学の観点からも信頼できるプロの意見や指導の必要性を感じている今日この頃です。

 身体のベースを作っているのは骨と筋肉です。その骨や筋肉は食べ物から作られます。薬から作られているのではありません。食べ物から作られた骨と筋肉をいかに強くし、効率良く使うか。私は健康の源はそこにあると考えています。 ただ、高齢の方の中には薬を心の頼りにしている方がいらっしゃるのも、日本の実状です。朝から十何錠も内服し、薬とお水でお腹いっぱいになってしまう方もいます。実際、お薬にも効果はあると思うのですが、「今はこれとこれは必要がないので減らしましょう」とお伝えしても、「不安だ」とおっしゃるのです。みなさんにもっと自分の身体に自信をもっていただくにはどうアプローチしたらいいのだろうとあれやこれや考えていますが、医者をやっていてやっぱり行き着くのは予防医学。治すことが医学だった昔と違って、近年は予防医学についての研究も多く行われていて、何が危険因子となり、どうケアしておけば発症しなかったかという解析を基に患者教育をすることが多く、診察の一環として説明することもあります。治療薬が現在と同じように使用され続ければ、医療費もいつかパンクしてしまいます。
一方で70代後半、80代でも姿勢良くしゃきっとしていて、“生きるお手本”のような方に出会うこともあります。そういう方たちにお話を聞くと、やはり身体を動かしていらっしゃるんです。血液の流れがいいんでしょうね。肌もツヤツヤ。体幹がしっかりしていて腹圧もあるから便秘とも無縁です。とはいえ運動習慣のない方に、「運動しましょう」と言っても続きません。やはりそこには親身なサポートが必要です。実際、私自身パーソナルトレーニングをお願いしていて体幹を鍛え、立位、座位に加えて、手術のときの姿勢の補正をしてもらったことがあるのですが、以来、術後の疲れ方にも雲泥の差を感じています。予防医学の観点からも信頼できるプロの意見や指導の必要性を感じている今日この頃です。

  • nk 自由が丘メディカルプラザ 一般内科・消化器内科
    小林 奈々 先生(Dr.Nana Kobayashi)プロフィール

    日本大学医学部卒業。日本外科学会外科専門医、消化器病外科学会、消化器病学会、大腸肛門学会会員。2007年日本大学医学部消化器外科所属、2012年さくら総合病院勤務、2015年より現職。最善の道を提案し、理解を得たうえで共に歩んでいくのが診療スタイル。健康維持のためのアドバイスにおいても「自分が試し、良い思ったことを伝える」をモットーに、ヨガやピラティスなどにも通っている
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